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詐欺で示談


1 詐欺をしてしまった…被害者に謝って許してもらいたい。

詐欺をしてしまった場合、第一に被害者の方に被害を弁償し、謝罪を尽くすことが大切です。

詐欺事件の中でも、特に振り込め詐欺のように複数人の関与が疑われる類型の場合は、被疑者の身元が安定し、逮捕の容疑を素直に認めている場合であっても、関係当局から「罪証隠滅と逃亡のおそれがある」と判断され、合計20日間の勾留が決定されてしまうのが実務の運用です。だからと言って、投げやりになり、被害者の方に何らの謝罪の意思も示さないことは、さらに状況を悪化させる危険性があります。自ら詐欺をしてしまった場合は勿論、会社の組織的詐欺行為や怖い先輩などに強要されてやむを得ず行ってしまった詐欺事件の場合でも、まずきちんと罪を認めて反省し、被害を弁償した上で被害者に示談を締結してもらうことが重要です。

このように、詐欺事件を実際に行ってしまったとしても、自暴自棄になるのではなく、まず自分の行動を反省し、取るべき対応をきちんととることが、被疑者の方自身にとってもより良い結果に繋がり得るのです。

2 示談とは

示談とは、被害者に対して相応の弁償金を支払った上で、「これで事件を解決する。」と当事者間で約束することをいいます。刑事事件の早期解決のために、被害者との示談はとても有効です。しかし、一言で示談といっても、刑事事件に与える影響はさまざまです。また、示談の締結は、一回限りの行為です。被害者の方に示談をしてもらうチャンスは一回しかありません。ですから、示談を締結する際は、示談の持つ意味を十分に理解した上で行うことが大切です。

効果小
被害弁償 加害者が被害者に被害を金銭的に弁償すること。
効果:真面目に反省し謝罪を尽くしたことを表現することができます。また将来の民事裁判の可能性を低くすることができます。
作成する書面:「受領証」
  単なる示談成立 加害者と被害者が事件を解決すると約束すること。
効果:事件が当事者間で解決したことを表現することができます。また将来の民事裁判を完全に予防することができます。
作成する書面:「示談書」
  宥恕付き示談成立 示談書の中で被害者の許しの意思が表示されること。
効果:事件が当事者間で完全に解決し、被害者が処罰を望んでいないことを表現することができます。
作成する書面:「宥恕条項付きの示談書」
  嘆願書作成 被害者が加害者を許す書面を作成すること。
効果:被害者が処罰を望んでいないこと、又は軽い処罰を望んでいることを表現することができます。
作成する書面:「嘆願書」
  被害届取下げ 被害者が事件の被害届を取下げること。
効果:事件が刑事事件として立件されることを被害者自身が望んでいないことを表現することができます。
作成する書面:「被害届取下書」

効果大
告訴の取消し 被害者が事件に対する告訴を取消すこと。
効果:被害者が処罰を望んでいないことを表現することができます。
作成する書面:「告訴取消書」

3 詐欺事件で示談してもらうためには

前述のように、詐欺事件の中でも振り込め詐欺のように組織的関与が疑われるような事件の場合は、事件が複雑で被害金額も多額になりがちであること、事件が社会的に与える影響が大きい、といった事情から、仮に被害者の方と示談が締結できたとしても、厳しい判断が下される可能性があります。

詐欺事件で示談をする場合は、前提として被害金額の賠償をすることが重要ですが、詐欺の場合、被害金額が多額、被害者の方が多いなど、賠償しきれない場合もあると思います。しかし、仮に払えないからと言って、被害者の方に謝罪の意思を示すことなく放置しておくと、関係当局から反省の色なしと判断されて、通常より厳しい判断が下されたり、被害者の方の被害感情がさらに高まりかねません。全額賠償できなかったとしても、きちんと謝罪の意思を示すことで、被害者の方が示談に応じて寛大な処分を求める旨の嘆願書等を寄せてくださり、こうした事情を有利に考慮してもらえるケースもあります。
こうした被害金額の弁償と合わせて、被害者の方と示談をまた、詐欺事件の示談金の相場は、被害額にもよりますが、一般的に数十万円以上となる場合が多いです。

詐欺事件で被害者の方と示談が締結できた場合は、具体的に下記のような利点があります。

①不起訴の獲得に役立つ。

刑事事件において示談が締結されれば、被害者側は、通常、刑事処罰を望んでいないことを示す書面(嘆願書や被害届取下書)にサインをすることになります。詐欺事件のように被害者がいる犯罪であれば、被害者の方が許しているかどうかは、検察官が起訴するかどうかを決める上で大変重要な決め手になります。

②執行猶予の獲得に役立つ。

示談の成立は、刑事裁判において、被告人側に有利な事情として考慮されます。執行猶予は、被告人側に有利な事情がある場合に限り認められるため、示談の成立は、自分の過ちを反省して被害弁償したということで、裁判官の心証を良くすることができ、執行猶予付きの判決が得られる可能性が高まります。

③留置場からの釈放に役立つ。

示談が成立すると、不起訴処分が見込まれ、これ以上の捜査の必要性がないと判断されやすいことから、早期の釈放につながる場合があります。

④事件を一挙に解決することができる。

示談の締結は、当事者間で今回の事件に関する被害弁償の問題が解決したことを示す効果があるため、刑事事件での処罰を避けることができると同時に、将来的に民事裁判で損害賠償請求をされることを防ぐ効果もあります。

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アトム法律事務所弁護士法人代表 岡野武志(第二東京弁護士会)